4th ART Collaboration
Saori Tao
“澄んだ人柄”という言葉はきっと日本語には存在しないはずだけれど、これは初めてお会いした時に瞬間的に浮かんだフレーズ。そんな印象の写真家・田尾沙織さんとの対談は、お話を聞けば聞くほど芯の強さと行動力に高揚した時間となりました。写真家の原点から長期滞在していたニューヨークのこと、コラボレーションした写真についてお聞きしました。
スペシャルインタビュー: Saori Tao(Photographer)
生まれ育った東京をベースに現在活動をしている田尾沙織さんは、世界50ヵ国をカメラとともに旅をしてきた写真家です。「旅はいくつかあるテーマのうちのひとつ」と控えめな口調で語りますが、意志を感じる硬質な写真の数々は見る人を駆り立てるパワーで溢れています。今回はそんなたくさんの写真の中から、ブランドの故郷であるニューヨークにフォーカスしてアートコラボレーションをさせていただきました。
Lips
- Q――今回のコラボレーション企画ではお世話になりました。ありがとうございます。
- A「いえいえ、こちらこそありがとうございます。」
- Q ――さっそくですが、田尾さんのご紹介も併せてお話を聞かせてください。写真家になろうと思ったきっかけみたいなものは何かあったんですか。
- A「高校生の時にそう思いました。」
- Q――とても早い時期に思われたんですね。
- A元々小さい頃から絵を描いたりお裁縫をしたり、手を動かして何かものを作ることが好きだったので、それを活かせるように高校は工業系のデザイン科に入りました。そこで写真の授業があって。」
- Q――そうだったんですね!何かを生み出すことがお好きだったんですね。
- A「絵も好きで得意だったんですけど、撮ってみたら写真の方がうまかった、という(笑)。先生からも褒められるし、自分でもそう思いましたし。そして写真部があったので入部しました。デザイン科の先生からは、”美術=絵と思うかもしれないけれど、表現方法はそれだけではないので自分の中の何かを見つけなさい”と言われていて。陶芸も授業にあったので、それがきっかけで本気で陶芸をはじめる友人もいて、そんな環境の高校だったんですよ。」
- Q――やはり写真は自分の中でフィットしたのでしょうか?これだ!みたいな。
- A「そうですね、写真の授業にすごくのめり込んでいましたね。カメラをいつも持ち歩いて、夢中になっていたと思います。とにかく写真が好きだったので、その当時に『ひとつぼ展』※というコンペティションを見に行ったんですね。」
※『ひとつぼ展』は、写真とグラフィックデザインの2つの部門からなるコンテスト。写真部門は、数多くの有名な若手写真家を輩出する二大写真家登竜門の一つ。 - Q――とても有名なコンテストですよね。
- A「そうですね、そんな感じでずっと写真を撮り続けています。」
Skyscraper
- Q――私は田尾さんのニューヨークの夜景の写真(Skyscraper)からインスピレーションを受けてコラボレーションのオファーをさせていただきました。とても幻想的で、都市でありながらも宇宙を感じるような不思議な魅力を持った写真だと感じています。
- A「ありがとうございます。これは薄い霧がかかっているマンハッタンの夜景です。霧に街の灯りが反射して光り、長時間露光で偶然に任せて光の線を描きました。現地で友人になったイタリア人アーティストが『愛と写真についてまた語ろう』とよく言っていて、そんなセリフが似合う夜景だと思います。」
- Q――写真も素敵ですが、イタリア人アーティストの言葉も素敵ですね!
- A「ニューヨークは皆さんご存じの通りメルティングポットで、たとえば文化庁の支援などで奨学金をもらってニューヨークに長期滞在するアーティストも世界各国からたくさんきています。」
- Q――そうなんですね。アーティスト同士が刺激し合って交流するようなイメージですか?
- A「まさにそうですね。1年半ほど長期滞在した時は、知人の紹介でとても広いアーティストレジデンスで暮らしていて、そこでいろんなアーティストの交流がありました。みんなでクリスマスにそこでご飯を作ったり。知り合ったアーティストは、各国のサポートを受けて創作活動を目的に長期で来ている人がほとんどでした。」
NEW YORKER
- Q――わたしも何度もニューヨークは訪れていますが、旅と住むとでは見えてくるものが異なりますよね。
- A「そうですね。わたしも最初は何度か短期でニューヨークを訪れて知り合いが増えていって…。そうすると”来週イベントがあるからおいでよ”とか”今度の展覧会きてよ”と誘いがきて嬉しいんですがもちろん行けないので、長く滞在することによってより深く人と関われて面白かったです。旅だけでなく『人の生活』もわたしの中のテーマのひとつで、住むことで見えてくることはたくさんありますよね。コラボレーションで提供させていただいた写真は、すべて2011年~12年にかけて長期滞在した時のもので、カメラを持って毎日街を歩き回ったストリートスナップです。旅で訪れる時とは当然時間の制約がないので、あちこちに出かけては写真に収めていました。赤いNEW YORKERのサインの写真(NEW YORKER)は、そんな日々を送る中で後々フイルムを確認して見ると、このサインが何枚も写っていることに気づきました。これは私にとってニューヨークの象徴だったのかもしれません。」
BLUE SKY
- Q――この澄み切った青空にそびえ立つビルの写真(BLUE SKY)は、モダンさと構築的な力強さが共存していて、私の中のThe New York Manhattan!という感じでとても好きです。
- A「これは冬の冷たい空気のマンハッタンを歩いていて、ふと見上げた空とビルを収めた写真です。日本よりも建物と建物が密集して建っていて、迫ってくるような迫力を感じました。」
- Q私は仕事の出張で訪れる機会が多いので、マンハッタンの景色がNew Yorkの象徴に感じますが、別のエリアに行くとまた違う国に来たような感覚になるほど、ニューヨークにはいろいろな顔がありますよね。
NY ME LOVE
- A「そういう意味では、このブルックリンで撮った写真(NY ME LOVE)はそうかもしれませんね。日本と違って”LOVE”という言葉をよく街で見かけて、それがアメリカらしいなって思って撮ったものです。」
- Q――これはブルックリンで撮ったものなんですね!特に今はカルチャーが生まれる街として注目の地区ですよね。
他にもニューヨークで体験した面白いエピソードはありますか? - A「わたしは現代アートも好きで、ソフィカルというフランス人のアーティストがいるんですが。ある日カフェかどこかでフランスの文化省か何かのアート週間のチラシをもらって見てみたら、ページの隅に小さく「ソフィカルがあなたを招待します。場所〇〇ホテル ○月○日~○日 0am~0 am」とだけ書いてありました。そのホテルを探して夜中の0時に行ってみると、アッパーイーストの小さな高級ホテルでした。ホテルに着いても何の展覧会のインフォメーションも書いていなくてどうしたらいいのか分からなかったんですが、ドアマンに「展覧会を見に来たんですけど…」と言ったらスイートルームに通してくれて、そこで展覧会をやっていたんです。作家本人も座っていて、部屋中に彼女の代表作が飾ってありました。世界的なアーティストなのに見に来ているのは数人で、彼女らしい”偶然見つけた人の為だけ”のサプライズな展示方法に心を射抜かれました。これはさすがに日本ではできないかもなと思いました。
- Q――それはニューヨークならではのエピソードですね。様々な国の人が活動している街だからこそ、様々な思考に触れられて、その発想を体感することができますよね!日本人は保守的な考えが表に立って、この解放的で自由な行動にたどりつくかというと、、、難しいかもしれませんね。
Floating Island New York
- Q――――コラボレーションのプロダクトをご覧になっていかがですか。先ほど話した夜景の写真(Skyscraper)からインスピレーションを受けて『KALEIDOSCOPE(万華鏡)』というテーマが浮かび、新たにLipsとFloating Island New Yorkというアートが生まれました。これは、万華鏡のように写真を転回させて輪のように繋げることで、多角的な新しい世界観を表現したものです。Tシャツとプルオーバーにはこのアートを、バンドカラーのシャツにはマンハッタンの写真(BLUE SKY)とブルックリンの写真(NY ME LOVE)を袖に拡大プリントしています。
- A「(サンプルを見ながら)こんな素敵なお洋服に仕上がったんですね。自分の写真をコラージュとして使用されることは今までなかったので、こういう見方もあるのかととても新鮮ですね。世界中の人が集まるニューヨークの多様性を表しているようで、とても素敵です。モデルさんのように着こなせるか不安ですが、日常的に着たいなって思います。」
- Q――ありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!本日はありがとうございました。最後に田尾さんのアートをご覧になるこのサイトに訪れる人たちに向けてメッセージをいただけますか。
- A旅に出るのが難しい世の中ですが、これを着て少しでも外出しているような明るい気分で春を迎えてもらえたら嬉しいです。
ARTist COLLAB ITEM
Saori Tao × Paul Stuart advance
KALEIDOSCOPEをテーマに、ニューヨークの夜景を輪にしたアート「Lips」をバックプリントしたTシャツ。
アイスグレー、ブルーグレー、ブラックの3カラーでサイズはM、Lの展開になります。
※ショートヘアのモデルは163㎝、ロングヘアのモデルは174㎝、サイズはともにMサイズを着用
KALEIDOSCOPEをテーマに、赤いNEW YORKERのサインを輪にしたアート「Floating Island New York」をバックプリントしたプルオーバー。
ホワイト、ミント、ブラックの3カラーでサイズはM、Lの展開になります。
※ロングヘアのモデルは174㎝、ショートヘアのモデルは163㎝、サイズはともにLサイズを着用
NY Landscapeというタイトルを付けたシャツは、
ホワイトにはブルックリン、チャコールにはマンハッタンの写真を袖に大きくプリントし、それぞれS、Mの2サイズ展開です。
※ロングヘアのモデルは174㎝、ショートヘアのモデルは163㎝、サイズはともにMサイズを着用